漢方治療入門講座

アレルギー疾患に対する漢方治療

アレルギー疾患に対する漢方治療

アレルギー疾患にも漢方薬は有効
近年、アレルギー疾患に対して現代医学は著しい進歩を遂げました。
漢方の世界に40年程どっぷりと漬かり、現代医学とは決別してしまっている私には眩しく思える反面、シンプルで一番大切なことを見逃してしまっていて、治療を返って混乱させてしまっているように思え、もどかしく感じます。
ごく限られた患者さんを診ているにすぎませんが、アレルギー疾患に対してもいわゆるアトピー性皮膚炎や喘息などの治療ガイドラインは完全に無視して殆ど漢方薬だけで治療を行い、かなりの効果を収めていると思います。
目の前の患者さんが良くなって頂くことだけを考え、時時刻刻と変化する病証を捕らえ、適切な漢方薬を選択するようにと心しています。
アレルギー疾患においても漢方治療は同病異治、異病同治
現代医学でもアレルギーマーチと言われアトピー性皮膚炎と喘息、花粉症、蕁麻疹は関連疾患と考えられています。
漢方医学の立場では病気の現れは異なっても病の奥に潜んでいる病証に応じて治療するのでアトピー性皮膚炎、喘息などと病名は異なっても証が同じなら同じ漢方薬を投与することとなります。ただ、漢方の立場では表(皮膚)に現れた病気であるアトピー性皮膚炎、蕁麻疹を裏の病気である喘息にもっていかないように細心の注意を払いながら治療にあたります。
アレルギー疾患に対しても漢方治療の第一は生命力、自然治癒力を高めること
(温裏剤や補気剤、気血両補剤など防衛剤投与が基本となる)
現代医学ではアレルギー性疾患に対して抗アレルギー薬やステロイド剤と起きている症状を抑える治療を金科玉条としていますが、漢方医学ではアレルギー疾患に限らず、全ての疾患に対して特殊な場合を除いて先ず第一に生命力、自然治癒力を高めることでアレルギーが良くなったり、再発しなくなることを良く経験します。
そのためには身体を温め、胃腸の働きを整え、臓腑を養うことを先ず、常に念頭に置いて治療に当たります。これらを目的とする漢方方剤を防衛剤と呼びますが、現代医学には防衛剤に相当する薬はごく特殊な用途に使用する薬を除いて存在しません。
アレルギー疾患の漢方治療の第二は毒を体外に排出すること
(解表剤、柴胡剤、清熱剤などの攻撃剤を適切に投与する必要がある)
次に漢方医学には積極的に毒を体外に排泄することで積極的にアレルギー疾患などを治す治療薬があります。その為に適切な時を選び解表剤、柴胡剤、清熱剤、駆瘀血剤(攻撃剤と総称)を適切に駆使し、排毒します。積極的に排毒を図る治療薬は現代医学には無いと言っても過言ではありません。
漢方薬の果たす役割は極めて大きいと思います。
現代医学の薬を使用する利点と欠点
現代医学の薬は起きている症状を抑えるという点において優れ、極めて重宝な薬ですが、ステロイド剤、気管支拡張剤、抗アレルギー剤、抗生剤、消炎剤などは臓腑の働きを弱らせるので出来る限り併用しないほうが結局、治りが良くなります。
花粉症に対する私見
花粉症の方を診察すると、漢方の立場では「冷えのぼせ」となっている方が殆どです。
漢方医学の立場での食事指導をさせていただきながら、漢方薬を中心として投与し、不足を現代医学の外用薬や抗アレルギー薬で補うようにしています。
花粉症に対して、漢方を試す価値は十分あります。
寒証(鼻水ダラダラタイプには真武湯が基本)
小青竜湯や麻黄附子細辛湯あるいは葛根湯加川芎辛夷など麻黄剤が一般的ですが、今日の日本人は想像を超えて虚弱化しており麻黄が合わない方が現実には多いです。
麻黄の配されない漢方薬を投与し、時に補助に麻黄の配された漢方薬を投与する程度にしています。
漢方医学の立場から診ると冷えと水毒が目立つ寒証タイプにはむしろ真武湯が基本と思います。
その他としては、茯苓四逆湯、人参湯、 人参湯加五味子、 桂枝人参湯、 呉茱萸湯、 当帰四逆加呉茱萸生姜湯、当帰芍薬散、苓甘姜味辛夏仁湯、黄耆建中湯や小建中湯、十全大補湯や大防風湯、芎帰膠艾湯、牛車腎気丸など。
熱証(のぼせ、鼻づまり、口渇の著しいタイプにも大抵、真武湯を併用)
真武湯をはじめ、寒証に対して使用する漢方薬と併用して使用しています。
  1. 気滞タイプ(胃のつかえ、頭痛)
    香蘇散、川芎茶調散
  2. 肺熱燥タイプ(喉のイガイガカサカサ、喉のつまり、上胸部に熱を触知)麦門冬湯、炙甘草湯、温経湯、滋陰至宝湯、滋陰降火湯、味麦六味丸など
  3. 陽明の熱タイプ(口内炎、ニキビ、食べ過ぎ)
    清暑益気湯、女神散など
  4. 少陽の熱タイプ(胸脇苦満、口苦) 補中益気湯、加味帰脾湯、加味逍遙散、柴胡清肝湯、荊芥連翹湯、竜胆瀉肝湯など
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