漢方治療入門講座

高血圧の漢方治療

高血圧の漢方治療

高血圧とは
俗にぐずでのろまで、いつまでも寝ている、エンジンのかかりにくいタイプを低血圧と言いますが、逆に活動的でセカセカ、イライラしやすく、血が頭に上りやすいタイプがあります。
疫学的にも高血圧の人は精力的に努力するために、社会的に地位が高い人が多いと言われています。
高血圧の治療は頭に血を上らせないように生活習慣を改めることに尽きます。
高血圧の漢方治療
高血圧の漢方治療は頭に上った血を下げる薬方を用いることになります。
若い人が幾ら頭に血が上っていても高血圧を来すのは希なのに、中年以降に高血圧になるのは上盛下虚(じょうせいかきょ)といって、下半身の力の衰え(腎虚)が根底にある為に頭に血が上りやすく、下がりにくい為と考えます。
従って、高血圧の漢方治療は下半身の虚を補う地黄や芍薬の配された補血剤、補陰剤(動脈硬化の抑制、コレステロール降下作用もある)がファーストチョイスとなります。
更に肝気の高ぶりを鎮めイライラ、セカセカを抑える柴胡剤や気や水を下げながら血をも下げる化痰利水剤あるいは裏熱をとったり、瘀血をとって血の流れを良くする清熱剤や駆瘀血剤(血栓溶解促進、血液粘調度低下作用がある)なども投与します。
多くの場合はそれらの複合剤を投与し、漢薬だけで現代医学の薬を一切使用しなくても、高血圧ばかりでなく、それに随伴する動脈硬化症・冠硬化症・高脂血症・高尿酸血症にも効果があり、同時に肩凝り・頭痛・便秘などの愁訴をも改善することができます。
しかし、今日の日本人は食生活や生活環境などの変化により、軟弱になり裏寒・裏虚・気虚に陥りやすく、上記の複合剤が現実には使い難くなっています。
また、保険治療の適応ではありませんが強心作用があって鎮静作用、降圧作用、脳循環代謝改善作用、止血及び血栓溶解促進作用などが同時に期待できる牛黄、麝香、犀角、れいよう角などが配された牛黄清心丸、片仔黄、救心、六神丸などがあります。
これらは貴重な生薬で今日、ワシントン条約で保護され、手に入りにくくなりましたが、現代医学の治療で副作用ばかり出るひとで一般的な漢方治療ではうまくいかない人(心虚に陥りやすいひとに多い)に適応があります。
ベトナム戦争で中国兵が外傷に備え、首にぶら下げていて一躍有名になった田七人参という民間薬があります。
止血作用があってかつ穏やかな駆瘀血作用があり血栓溶解を促進するため中年以降の諸疾患、動脈硬化、高血圧、冠動脈疾患などに広く使用の機会があります。比較的安価で手に入りやすく使いやすい薬です。
地竜「ミミズの干したもの」も解熱、鎮静、降圧、血栓溶解促進作用があります。
エキス散の形で安価で使用できますが、裏寒や気虚におちいっているときには禁忌です。
上盛下虚・上実下虚とは
上盛下虚・上実下虚とは下半身の力が衰え(腎虚)、上半身に気が行きすぎた状態を指します。(代表薬方は八味地黄丸)
中年以降になると若い頃より顔が大きくなりほてりやすく、首が太くなり、肩に肉がつき肩が凝りやすく、腕の付け根が太くなるのに反してお尻の肉が落ち、脚が細くなる、若い頃より足取りが遅くなり、腰が曲がる。
腎気が衰えた結果として腰痛、膝痛、前立腺肥大、老人性膣炎、インポテンツ、骨粗鬆症、高血圧など諸疾患が起きてくる。
上熱下寒(下半身が冷え、気が上半身に行きすぎた状態)が長期にわたり存在すると下半身が虚となり、上盛下虚へと発展することが多い。
上熱下寒と上盛下虚
上熱下寒(気の上衡) 上盛下虚
肝虚 腎虚、肝虚
主薬は芍薬、桂枝湯が基本 主薬は地黄、芍薬
当帰四逆加呉茱萸生姜湯が代表処方 八味地黄丸が代表処方
上熱症状*1が顕著 上熱症状*1が軽い
上半身は太くなっていない 上半身が太くなっている
下寒症状*2が顕著 下寒症状*2は顕著でない
下虚の症状が無い 下虚の症状が顕著
*1上熱症状=顔のほてり、頭痛、肩凝り、耳鳴り、ふらつき、イライラ、不眠など。
*2下寒症状=足腰の冷え、痛み 着色しない尿が頻数。
 
 

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