漢方症例集

小兒のアトピー性皮膚炎、てんかんに柴胡桂枝湯

子供のアトピー性皮膚炎、てんかんに柴胡桂枝湯
女児(9歳)
 
約1年前に全身性間代性痙攣が数分起こり,以降も5回にわたり同様の発作があった。脳波異常を認め,抗けいれん薬の服用を勧められるが,漢方治療を希望され受診。顔色がよく,太りぎみで発育良好であるが,口をぽかんと開けている。胸脇苦満,両腹直筋の緊張がある。臍下は冷えている。生理は来潮していない。歯ぎしりがあり,両足が凝っていると訴える。アトピーが主として首の周りに出ている。母親の希望で柴胡桂枝湯3 g/日分2を投与した。
1カ月後,受診。歯ぎしりがよくなったとのことで,同処方を続けた。
4カ月後,受診。初潮があった影響か,小さな発作があったとのこと。同処方を続けた
5カ月後,受診。たまに歯ぎしりがあり,発作もあった。アトピーが首や頭に増悪していたので,柴胡桂枝湯5 g/日分2に増量した。
7カ月後,受診。脳波に異常所見があり,抗てんかん薬を服用しようか迷っていたが,同処方を続けた。発作は出ていない。
11カ月後,受診。脳波に異常はなかった。発作もなく過ごしている。アトピーも落ち着いている。抗てんかん薬は結局服用しなかったとのことで,同処方を続けた。
2年5カ月後,受診。生理が順調に1カ月に一度来潮。発作もなくアトピーもすっかり落ち着いている。
【解説】柴胡桂枝湯は小柴胡湯と桂枝湯を合わせた処方で,小児の体質改善薬としてアトピーなどのアレルギー性疾患やてんかん・夜尿症などに用いる効果の高い処方です。また,成人の胃・十二指腸潰瘍や潰瘍性大腸炎,腹部不定愁訴などによく用いられる処方です。胸脇苦満や腹直筋の緊張を目標に用います。この患者さんは,思春期で病気が治りやすい時期にあったために,てんかんに効果があったのではないかと考えられます。
 
 

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