漢方治療の基本

六君子湯について

六君子湯について

六君子湯(人参・甘草・生姜・白朮・茯苓・大棗・陳皮・半夏)とは

六君子湯とは補気剤の基本である四君子湯に陳皮と半夏が配され、痰飲(水毒)を消す二陳湯の作用も加わった薬方です。
内臓を温めて働きを活発にし、身体の力をつけながら気と水を下ろす作用があります。処方構成からみると、小柴胡湯の一歩手前の軽い少陽の薬方であり、脾胃虚弱タイプの諸疾患に幅広く用いられます。
生冷物を取り過ぎ運動不足となっている今日の日本人は、消化器が弱り水分が胃内に停滞しがちとなっており、日常診療において六君子湯が奏効する症例が非常に多いのです。
今日、小柴胡湯が頻用され過ぎる傾向にあり、小柴胡湯の使用過誤が云々されていますが、軽い少陽の薬である六君子湯をまず使用し、その後に小柴胡湯証が確実にあると判断してから小柴胡湯を投与すれば、小柴胡湯の使用過誤を防ぐことができます。

使用目標=証
脾胃虚弱脾気虚

疲れやすい、食欲不振、小食、太れない、下痢しやすい、冷える

軽い熱状心下痞、胃内停水

舌の先が赤い、口唇が赤い、かさかさ、口渇、冷たい飲み物をほしがる、舌白苔、顔面が微かに紅潮

六君子湯の臨床応用
  1. 脾胃虚弱タイプのNUDのファーストチョイス
    胃のもたれ 胃のつかえ 食欲不振 胃痛 下痢 便秘 慢性腸炎など胃内停水や胃下垂を認めることが多い。
  2. 脾胃虚弱タイプの鼻炎、気管支炎、喘息のファーストチョイス
    咳・痰・鼻水が続く風邪に適応が多い。
    陳皮・半夏が喉や気管支の軽い熱を冷ます。
  3. 脾胃虚弱タイプの心身症・神経症・不眠症のファーストチョイス
    イライラ、クヨクヨ、耳鳴り、ふらつき、不眠、のぼせに適応が多い。
    陳皮・半夏は体内の余分な水分と同時に気の滞りをも排除する。※その他、脾胃虚弱タイプの高血圧症、胃腸に障害を起こしやすい漢薬を服用させるときの補助薬方や、癌治療など攻撃力の強い治療の際の副作用軽減に広く使用する。
六君子湯の使用上の注意

六君子湯は四君子湯と異なり半夏、陳皮が配されているため気と水を下し、軽い少陽の熱を冷まします。
体を冷やしすぎ、下痢する時、エキス剤治療では人参湯エキス顆粒と合方して用います。

一般に示されているわけではないが、漢薬を使用する際にこのマップを参照頂ければ漢薬の応用はより正確に誤治にも的確に対処できます。

  • 人参湯(人参・甘草・乾姜・白朮)
  • 六君子湯(人参・甘草・生姜・白朮・茯苓・大棗・陳皮・半夏)
    人参湯+利水+軽い熱さまし
  • 小柴胡湯(人参・甘草・生姜・大棗・半夏・柴胡・黄ごん)
    六君子湯+熱さまし
  • 小建中湯(芍薬・甘草・生姜・大棗・桂枝・膠飴)
  • 真武湯(芍薬・生姜・白朮・茯苓・附子) 

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