漢方治療の基本

漢方医学における治療と治療薬法

漢方医学における治療と治療薬法

漢方医学における治療

漢方医学は現代医学の様な病因に基づいて診断・治療するのではなく、病気になった時の生体の防衛反応のあり方で疾病の診断・治療をします。
一般的ではありませんが、杏林ワコー薬局の伊藤康雄氏の分類に基づくと、理解しやすく、漢薬の臨床応用が正しく行なえると思います。

陽病(陽証)

生体の防衛機能不全(hyper function)
気血の流れの欝滞により生体の機能低下を起こしているが、汗・吐・下・中和により気の欝滞を取り除くと共に、病邪を体外に排除する攻撃的治療法が取られる
傷寒論では

  1. 太陽病 … 病邪が人体の浅い部分を侵襲するに止まっている時
    表証 … 発汗 解表法 … 麻黄湯・葛根湯(麻黄など)
  2. 陽明病 … 病邪が人体の深部まで侵襲
    裏熱実証 … 瀉下法 ⇒ 大承気湯・調胃承気湯(大黄・石膏など)
  3. 少陽病 … 病邪が半表半裏、表と裏の中間にある時
    半表半裏証…中和・和解剤 ⇒ 小柴胡湯・柴胡桂枝乾姜湯(柴胡)※現実には慢性病は三病のミックスされた状態が多い。後世方の薬方を多用
    防風通聖散(麻黄・大黄・石膏)
    荊芥連翹湯 (柴胡・黄連・荊芥)
陰病(陰証)

生体の防衛機能低下(hypo function)
気血の流れが生体の代謝低下により欝滞している
温め、補うことにより生体の新陳代謝を高め自然治癒を促す防衛的治療法を必要とする

  1. 裏寒(生体の著しい冷え)
    身体を温め新陳代謝を高める 温裏剤の適応
    四逆湯類(乾姜・附子)・真武湯(乾生姜・附子)・人参湯(乾姜)
  2. 気虚(心肺胃腸の働きの衰え)
    心・肺・脾の働きを良くする補気剤の適応
    四君子湯(人参)
  3. 裏虚(肝の働きの衰え) … 
    肝の働きを良くする裏虚に対する方剤の適応
    芍薬甘草湯(芍薬)・小建中湯(芍薬)
  4. 腎虚(腎の働きの衰え)4-1  血虚(肝腎の働きの衰え)
    肝や腎の働きを良くする補血剤の適応
    四物湯(地黄・芍薬)
    4-2 陰虚(血虚に虚熱症状が加わった)
    六味丸(地黄)
    4-3 陽虚((表を巡らして補陰)
    八味地黄丸(地黄.桂枝..附子)
  1. 津液不足滋陰剤(麦門冬など) 滋陰至宝湯.滋陰降火湯 身体を潤して自然治癒力を高める
     
     
     
     
漢方医学における治療薬法
攻撃剤

陽病(陽証)に使用

  1. 強く発汗して病邪を発散
    解表剤(麻黄…葛根湯・麻黄湯) 麻黄は作用が他の解表剤と比して、峻烈なので、使用する場面が限られます。特に、幼児、老人、出産後の女性など虚弱な方への使用は、臨床的には控えたほうが良いようです。
  2. 下して病邪を排出
    清熱瀉下剤(黄連・黄ごん・黄柏・大黄・芒硝・石膏・山梔子…調胃承気湯・半夏瀉心湯・黄連解毒湯)
    「ごん」は草冠に今と書きます。
  3. 中和して病邪を排出
    柴胡剤(柴胡…小柴胡湯・大柴胡湯・柴胡桂枝湯
  4. 駆瘀血して病邪を排出
    駆瘀血剤(桃仁・牡丹皮・紅花・蘇木・水蛭…桂枝茯苓丸・桃核承気湯・大黄牡丹皮湯・通導散)
防衛剤
陰病(陰証)に使用
  1. 身体を温めて代謝・自然治癒力を高める
    温裏剤((生姜・附子)甘草乾姜湯・人参湯・真武湯・四逆湯類・附子湯
  2. 脾胃を補い、自然治癒力を高める 脾胃剤(人参、黄耆、膠飴)
    A  補気剤
    四君子湯・六君子湯
    B  気血両補剤【補気剤+補血剤】

    十全大補湯・炙甘草湯・大防風湯・人参養栄湯
    C 建中湯類(膠飴で脾胃を温補)
    小建中湯・黄耆建中湯・当帰建中湯

  3.  肝・腎を補い自然治癒力を高める(地黄・芍薬)
    補血剤、補陰剤、補陽剤…  四物湯..六味丸・八味丸 
  4. 滋陰して自然治癒力を高める(麦門冬など)滋陰剤            滋陰至宝湯.滋陰降火湯
    (杏林ワコー薬局 伊藤康雄氏の分類)
     

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