漢方治療の基本

補血剤、補陰剤、補陽剤ついて

補血剤、補陰剤、補陽剤とは

補血剤、補陰剤、補陽剤

肝や腎の機能の働きをよくし、自然治癒力を高めます。
血虚、腎陰虚、腎陽虚の状態の時に用います。一括して腎虚と言います。
※主薬は地黄。

血虚

肝・腎両虚、裏虚の進展した状態、血が不足した状態(血虚≠貧血)

  • 顔色が悪くつやがない
  • 皮膚がかさかさして潤いが無い
  • 爪の色が悪くもろい
  • 眼がかすむ
  • 眼が疲れる
  • 眼の乾燥感
  • 頭がボーとする
  • ふらつく
  • 動悸
  • 四肢の痺れ
  • 筋肉がびくびくひきつる
  • 月経周期の延長
  • 月経量が少ない
  • 無月経。
  • 舌質は淡白紅
  • 食欲あり下痢しない大病後や産後など病み衰えた状態。老人になると身体が縮み小さくなり、骨がスカスカになるのを思い浮かべると理解しやすいでしょう。
    地黄や芍薬が配され、肝・腎の働きを積極的に良くし、自然治癒力を高める単純な処方であり、四物湯などの補血剤の適応となります。
四物湯(当帰・芍薬・川芎・地黄)が基本薬

「婦人の聖薬」とも言われ、主に以下のような症状に効力を発揮します。
妊娠腎、高血圧、切迫流産、産後血脚気、血の道、月経異常、腰痛症、膝関節痛、関節リウマチ
また、高血圧、痛風、高脂血症、皮膚病など中年以降の諸疾患にも効果があります。

きゅう帰膠艾湯(四物湯・甘草・艾葉・阿膠)

下焦の瘀血を艾葉で温めながら下す作用がある。止血作用のある阿膠が配されており、、過多月経、痔、痔出血、血尿などにも用いられる。

当帰飲子(四物湯・防風・黄耆・荊芥・甘草・しつり子・何首烏)

皮膚のカサカサでかゆくなるアトピー、老人性掻痒症、高血圧など諸疾患に用いられる。

七物降下湯(四物湯・黄耆・黄柏・釣藤鈎)

肝気を平らかにし、脳神経の異常興奮、脳血管の攣縮に効く釣藤鈎が配されている。高血圧症 動脈硬化ばかりでなく、電子機器を使いすぎて肝気が高ぶり、肩こり、頭痛、眼精疲労、眩暈、不眠を訴える若年者にも使用の機会がある。
 

温清飲(四物湯・黄連解毒湯)

アトピーなどで皮膚が赤みを帯び、カサカサで痒みのひどいときや、のぼせのある高血圧などの諸疾患に用いる。

疎経活血湯(四物湯・二陳湯・桃仁・牛膝・竜胆・防巳・防風・威霊仙・白し

水毒と瘀血のある人の腰痛、神経痛、高血圧に用いられる。

腎陰虚

血虚に虚熱症状が加わったもの。
顔面頬部の紅潮
手足や顔のほてり
寝汗
のぼせ
不眠
めまい
喉の渇き

六味丸(地黄・山薬・山茱萸・茯苓・沢瀉・牡丹皮)が基本薬
 
  • 薬方の展開(日常よく使用し、効果を実感している)
  • 杞菊地黄丸 六味丸 菊花 枸杞子
  • 知柏地黄丸―六味丸 知母 黄柏
  • 味麦地黄丸「八仙長寿丸」―六味丸 麦門冬 五味子

以下のような症状に効力を発揮します。
小児発育異常、月経異常、更年期障害、喘息、アトピー性皮膚炎、膠原病、高血圧、糖尿病、眼精疲労、耳鳴り、慢性腎炎、インポテンツ

腎(陽)虚

表を巡らして補陰。

例)
腎疾患

腎炎、ネフローゼ、腎結石、萎縮腎、腎盂炎、蛋白尿

膀胱疾患

膀胱炎、膀胱結核、膀胱結石、膀胱括約筋麻痺、膀胱直腸障害

前立腺肥大

尿閉、尿失禁、夜尿症、夜間頻尿

腰痛症など

坐骨神経痛、膝関節症、下肢麻痺

中年以降の諸疾患

高血圧、糖尿病、白内障、眼底出血、耳鳴り、難聴、骨粗鬆症、老人性膣炎、肺気腫、老人性皮膚掻痒症、動作緩慢、健忘、聴力低下、耳鳴り、めまい、足腰がだるい・冷える、寒がり、尿が透明、明け方に軟便
 

八味丸(六味丸・桂枝・附子)が基本薬

 

牛車腎気丸(八味地黄丸・牛膝・車前子)

車前子‐利水・通淋・明目
牛膝.   駆瘀止痛.活血通経.補益肝腎
八味丸の補腎効果を強化した処方

補血剤・補陰剤使用上の注意

実際の臨床では血虚、陰虚は単独で存在せず、気血両虚となっていることも多い。
初心者はまず、気血両補剤の使用を十二分に習得されることをお勧めします。
気虚を伴っているのを知らずに補血剤、補陰剤を単独で使用すると胃腸障害などを起こしやすい。
裏虚に対する方剤は補血剤、補陰剤ほど重くないため、小建中湯などは単独で使用しやすいが、気虚を伴っている場合は小建中湯に人参湯や四君子湯、大建中湯を合方して用いると良いでしょう。
また、八味地黄丸も単独で用いるより大建中湯など補気剤と合方して用いると良いことが多々あります。
 
 

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