漢方だより

食べる漢方薬

健康に留意して生活する

最近の異常気象は私たちが想像する以上に地球環境が壊滅的に急激に悪化の一途をたどっているためのようです。
人間の体を痛めつけているのは暑さや湿気ばかりではありません。
一昔前と異なり、目に見えない有害電磁波、ダイオキシンなど列挙できぬほど多種のものが私たちの体を知らぬ間に蝕んでいます。

この中で私たちは人間として命をまっとうし、人間でなければ味わえない喜びを味わい、人間でなければ出来ない使命を果たさなければなりません。そのためには今まで以上に健康に留意して生活する必要があります。

豆は食べる補陰剤

さて、年を取ると私たちの体は2回りも3回りも縮んで小さくなります。また、産後や病後にげっそり体が痩せ衰えるのもよく見聞きします。
このように身体のあるべきものが少なくなることを漢方医学では陰虚、血虚と呼びます。身体を滋養強壮する補陰薬、補血薬の代表は地黄で、黒豆のような味と色がする生薬です。
これらは腎(腎臓ばかりでなく泌尿器、骨、内分泌、精神作用など)の働きを良くします。腎気の衰えの来る中年以降の諸疾患(腰痛、前立腺肥大、高血圧、骨粗しょう症など)には地黄の配された薬方を投与するのが漢方医学の定石です。
黒豆はお正月のおせち料理の中に入りこの一年を〔まめで黒々と]との願いが込められているとのことですが、豆はよく見ると腎臓の形をしています。豆は食べる補陰薬です。
日常、食べるもので胡麻も補陰薬として用いられています。

骨や皮は栄養の宝庫

また、漢方医学では阿膠と言ってロバの皮を煮詰めて作ったニカワを補血薬として用います。ニカワの成分のゼラチンやコラーゲン等を薬として利用しているのです。
私たちは魚や肉を食べる時、食べやすい身だけ食べて皮や骨、筋を捨ててしまいますがゼラチンやコラーゲンなど体に必要な大切な栄養素が沢山含まれていま す。最近、コラーゲン健康食品が特に出回っていますが、健康食品を考える前にまず、魚や肉の皮や骨、筋を捨てずに活用した料理を作りましょう。

高温多湿の風土に生きる私たちの健康を守るために、先祖の深い知恵の込められた温かい米飯と味噌汁を中心とする日本の伝統食を見直しましょう。

滋養強壮効果のある補陰薬、補血薬の配された補陰剤、補血剤の代表は四物湯、六味丸、八味地黄丸です。しかし、現実には陰虚、血虚が認められるとき は気虚に陥っていることが殆どです。気血両補剤である十全大補湯、人参養栄湯、大防風湯、炙甘草湯などを日常診療では良く使用します。

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