咳・痰・喘息の基本薬は六君子湯
漢方医学では咳や痰が痰飲といって水毒である場合が多く、その原因が特に脾の機能障害が主となって起きていると考えます。
従って、咳や痰の薬方の基本は補気剤である四君子湯に燥湿化痰、鎮咳去痰作用のある半夏と、理気化痰作用のある陳皮が配された軽い熱取りである、六君子湯と言えます。
このことは小柴胡湯や参蘇飲など咳や痰のある時に使用される薬方の多くは六君子湯加減方であることからも証明されると思います。
病状がシビアで、抗生物質との併用を余儀なくされる時は、漢薬の使用は茯苓四逆湯や人参湯、六君子湯としたほうが良い効果を得る事が多いと思います。
漢方医学的には抗生剤は熱取りの薬と言えるかと思いますが、体を冷やし、胃腸を損ねてしまうことが多いからです。漢薬を使用する時、鎮咳剤、去痰剤、消炎剤は原則として必要ないと考えます。
喘息の漢方治療薬方として麻黄(気管支拡張剤エフェドリン含有)の配された小青竜湯や麻杏甘石湯、柴胡や厚朴の配された柴朴湯などが有名ですが、虚弱化した今日の日本人に適合しないことが多いです。
喘息がでないようにするには喘息の原因となっている元を正す体質改善薬(多くの場合は脾胃を整え、裏を補う薬方)を投与することで解決できることが多いのです。
ここが現代医学にない漢方医学の最大の利点となります。
気管支拡張剤投与を受けて受診するひとの多くは漢方医学の立場から診ると心虚を引き起こしていることが多く一昔前に築き上げられた先人の知恵である上記の喘息治療薬方は麻黄や柴胡、厚朴、石膏が配されており、心虚を増悪させたり、胃腸を損なわせ、患者さんをかえって苦しめる事が多いため今日にはあまり役に立たなくなっています。
現代医学の中での、喘息の漢薬治療は、先人の知恵をそのまま継承するのではなく、今日の現状に合った漢方治療を模索する必要があります。
近年、都会は年々砂漠化しているといわれていますがその影響か近頃私が良くお出しする咳・痰の漢方薬は肺の燥熱を滋潤する作用のある麦門冬の配された処方が多くなりました。
- 麦門冬湯
- 炙甘草湯
- 清暑益気湯
- 滋陰至宝湯
- 竹茹温胆湯
- 温経湯
- 滋陰降火湯
中医学では寒痰、湿痰、熱痰、燥痰と痰の性質から化痰止咳薬を分類しています。
⇒健脾益腎を基本に温性化痰薬を配合
半夏・天南星・桔梗・白芥子(五味子・乾姜・細辛・陳皮・枳実・厚朴)
⇒寒性の化痰薬を使用
前胡・貝母・楼仁・竹茹・牛黄(黄連・黄ごん・石膏・柴胡)
陰虚の時は…麦門冬・天門冬・百合・黄精(当帰・芍薬・地黄)
止咳平喘薬 湿性…杏仁・紫苑・款冬花 寒性…桑白皮