老人に対する漢方治療の注意
麻黄剤、厚朴が配された薬方の投与は慎重に
老人には麻黄剤は慎重に投与する必要があります。
今日の一般的漢方治療指針では老人の風邪には麻黄附子細辛湯と書かれていますが、老人には気虚に陥っているひとが多く、麻黄剤を投与すると胃腸障害、動悸をきたしやすい。
又、麻黄はエフェドリンの含有量が多く、前立腺肥大のあるひとに用いると尿閉をきたしやく、心筋梗塞の既往のあるひとに用いる胸痛を起こしやすい(不眠をきたすこともある)。
老人の風邪には麻黄附子細辛湯と同じ新陳代謝を高める附子が配され、麻黄の配されない真武湯をファーストチョイスと考えてください。
胃の冷えやすいタイプには香蘇散が適応します。西洋医学の薬のPL穎粒の感覚で使いやすい薬です。
厚朴の配された薬方も裏寒、気虚に陥りやすい老人には慎重に投与する必要があります。
付記
保険の適応ではありませんが牛黄や麝香の配された六神丸、救心、片仔黄、牛黄清心丸、ウサイエンなどは強心鎮静、降圧作用があり、老人にとって重宝な薬です。
高価ですが、西洋薬の降圧剤などが合わない患者さんや保険の適応となっている漢方薬で十分な効果が得られない時に使用しています。
又、老人には鹿茸、蛤などホルモン作用のある動物性の補陽薬を用いて、起死回生の効果が期待出来ることがあります。