各種疾患への応用

血の道について

血の道について

血の道の症状

更年期ばかりでなく産前、産後や卵巣、子宮摘出後やあるいはそうしたことのない若い女性でもいわゆる更年期症状、独特の自律神経失調症状が現れることがあります。
アカデミックな言葉ではありませんがその独特の自律神経失調症状に対して一般に、血の道という言葉が使用されてきました。
漢方医学の立場からみると血虚や瘀血がベースにあるところに冷えと気滞が絡まって発症するように思います。

  • 身体症状 一番代表的な症状はホットフラッシュです。気温に関係なく突然、顔や体[特に上半身]がカーっとほてったりのぼせ、どっと汗が出ますと、途端にスーっと汗がひき背中がぞくぞく寒くなります。
    めまい、ふらつき、体が重い、だるい、疲れやすい、動悸、息切れ、肩凝り、腰痛、手足の節々が痛い、腰や手足が冷える、手足のしびれ、寝付きが悪い、眠りが浅い、頭痛、頭重、耳鳴、眼のしょぼつきなど。
  • 精神症状 怒りやすい、すぐイライラする、クヨクヨしたり憂鬱になる、不安感、焦燥感
血の道の特徴

多彩な症状、訴えの重篤さにもかかわらず検査してもたいした異常がない。
上記の身体症状と共に上記の精神症状が何も思い当たることがないのに体の奥底から沸き上がってくる。何か誘因があるとコントロールを失い極端にエスカレートする。

血の道の治療と予後

治療しなくても自然に軽快することが多く、一般的にひどいものでも2~3年で軽快するが、生涯のうちに何度も繰返したり、一生、血の道の治らない人もいる。
その人にとって重大な心因(肉親の死や病気、子供の巣立ち、夫の不貞、離婚など)があって発症した場合は軽快しにくい。
また、生来の性格や気性と深く関係があり精神的状態の不安定な人に強く発症し、予後も悪いことが多い。

血の道の成因

現代医学では、ホルモン補充療法がすすめられているが、血の道は更年期や子宮、卵巣摘出後ばかりでなく若い女性にも起こり単純に、ホルモン不足が原因とは考えにくい。自律神経の嵐の中でホルモンアンバランスが主因と考えられ、ホルモン補充療法は最後の手段と考え、漢薬などの東洋医学的治療、心理療法をまず行うのが合理的である。

血の道を乗り切るためには

血の道症状は大半は更年期に発症し、更年期の女性の70~80%に程度の差はあれ出現するといわれています。
特に更年期は本人が自覚していなくても体力、気力が衰えガンバリがきかなくなってきているところに重大な心因が加わり、厳しい転機を迎える時です。
体力、気力の衰えが拍車をかけて心理的に追いつめられやすいところに振って湧いたように急に体調不良となり、何がなんだか分からない程、迷ってしまう人が多い。
身体の検査を受け、他の病気を引き起こしていないか確かめ、血の道だからひどくてもそのうち落ち着いてくることをしっかり認識することが一番大切です。
それだけで軽快してしまう人もあります。
更年期は生理が不調となったり閉経を迎え、老いを認めざるを得なくなる時でもあります。
花の盛りを味わった女性の身にはショックなことですが、血の道症状の出現を、残りの人生をどう生きていくのが良いのか考え直すチャンスとすることで症状の軽快、軽減を見ることが多い。
子宮卵巣摘出後に女でなくなってしまったとの思いを持つ人がいますが、摘出後もホルモン中枢は健在で、女として変わりないことを認識することで血の道症状が軽快する人が多い。
産前産後は女性の体にとって医学の発達した今日においても最大の危機である。
細心の注意を払って過ごすように説いた昔からの心得を守らずに産前産後2日目に洗髪して血の道を起こした人がいます。
家庭内のイザコザが引き金となったとはっきり推察できる人もある。
血の道においては特に本人の気づきと心の安定、身体の安静がポイントとなると思われます。

日本における血の道の治療の歴史

明治の始めまで、日本では主として漢薬などの東洋医学的治療が行われてきました。
仏教の伝来と共に日本に伝えられ僧侶が一部の上流階級を対象に治療を行っていたに過ぎませんが、戦国時代にはすでに婦人薬(血の道の薬)が一般の人を対象に主に産前産後の病に用いるために売り出されるまでに普及、発展しました。もともと婦人薬は武士が戦場で刀傷を負った時、急いで熱湯で振り出して飲ませるように日本で開発した薬でしたが、刀傷も腹の傷も同じと慧眼で婦人の産前産後に用いて著効があったため用いられるようになったといいます。
今日でもその頃と大体同じ処方構成の婦人薬が市販されていますが、日本漢方の伝統の素晴らしさを痛感します。
 
 

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