漢方症例集

不妊に温経湯と真武湯

不妊に温経湯と真武湯
女性(25歳)
158cm,57kgとがっしりした身体の人で,顔がほてって,汗ばんでいる。婦人科で桂枝茯苓丸を投与されていた。結婚して3年になるが子どもに恵まれず,婦人科では無排卵性月経といわれ,ホルモン治療を勧められていた。毎年,春と秋に花粉症があり,この秋も目が痒く,鼻がグズグズして辛いと言い受診。母親が薬剤師で,漢方治療を希望していた。
下腹は充実して瘀血があるものの,心下や臍下は冷えている。上胸部には熱を感じ,皮膚がカサカサしていて,唇も赤く乾燥していた。肺に燥熱があると思われたので,桂枝茯苓丸証ではなく,温経湯証と判断。隠れた裏寒もあると思われたため,温経湯5gと真武湯5gを一緒に分2で投与。
1カ月後,月経が順調となり,体温が二相性となり,無排卵でなくなった。アレルギー症状も驚くほど楽になった。
2カ月後、自然妊娠。健やかな男児に恵まれる。
【解説】 漢方薬は,「花粉症だからこの漢方薬」「無排卵性月経だからあの漢方薬」と病名で投与するのではなく,患者さんの状況を漢方医学の立場からしっかりと捉え,適切に漢方薬を投与するとこの人のように思いもかけず短期間で効いて喜ばれることがあります。漢方を知っていることで,臨床医として嬉しい思いをさせていただけます。本当にありがたいことです。なお,温経湯は花粉症ばかりでなく,アトピー性皮膚炎・喘息・蕁麻疹などアレルギー疾患にもよく用い,きわめて効果の高い薬です。
 
 

ページトップへ