成人のアトピー性皮膚炎に帰耆建中湯
女性(44歳)
皮膚の炎症、痒みが顔、首、腕、背中に酷く温清飲や十味敗毒湯などの漢薬と共に抗アレルギー薬を服用し、ステロイド軟膏を使用しているが、はかばかしくないと訴え受診。167 cm、57 kgとしっかりした体つきの人です。猫、ホコリ、ダニのアレルギーがあり、花粉症があります。酒、コーヒーをよく摂取されている。暑がりで寒がり、首肩のこり、口渇があるが、不眠はありません。手掌発汗、手煩熱、両腹直筋の緊張、よく診ると虚脈でわずかに脉不整があるかのような感がしました。
以上より、漢方医学の立場では虚労、小建中湯証と思われました。脾胃を整えることが、皮膚を良くするとお話し、出来るだけ酒やコーヒーを控えられるよう、早寝早起き、お腹に優しい食事を腹八分に摂取されるように指示しました。煎薬で小建中湯を投与し、ワセリンを主として塗布し、痒みの酷い時にステロイド軟膏を併用することにしました。
一ヵ月後、受診: 湿疹が少し落ち着いてきたと。同じ処方を続ける。
2ヵ月後、受診: 湿疹も落ち着き、脉が落ち着いてきた 帰耆建中湯に変更。
9ヵ月後、受診: 酒、コーヒーをやめた。湿疹が出なくなり、気分も良い 同じ処方を続ける。
1年3ヵ月後、受診: 湿疹も出なくなり、すっかり気分も良いとのこと。希望で当帰建中湯エキス顆粒5gと黄耆建中湯エキス顆粒 6g を分2で投与
1年5ヵ月後、受診: 湿疹も出なく、生理も調子よい。
帰耆建中湯は小建中湯に当帰と黄耆を加味した処方で、諸々の虚を補う効能があり、褥瘡や慢性中耳炎など難症に適応がありますが、成人のアトピー性皮膚炎に良く用いて効果があります。