漢方症例集

治りにくい風邪に炙甘草湯

治りにくい風邪に炙甘草湯
女性(60歳)
某年122日初診
数年前より風邪をひきやすく、又、風邪がぬけきらず、息切れがし、乾燥すると胸がおかしい。
頭がボーッとして耳鳴がする。汗をかきやすい。口唇が乾燥し、口が渇く。肩が凝り、腰がだるく左膝関節が痛む。手足がほてる。便秘でセンナ、大黄を服用している。
5年くらい前より体重が増え、152センチ、60キロで、心臓肥大を指摘されている。
臍下や背中に冷えを触知し、顔や手足がむくんでいるが、口唇がかさつき赤みがある。
肝臓部を叩くとかなりの痛みがある。
センナ、大黄にて体を冷やしてしまっているから風邪が治りにくい事を説明し、中止するとともに体を冷やすものを制限し、水分を過剰に摂取しない様に指示する。
真武湯エキス顆粒を一日一回服用すると共に、炙甘草湯エキス顆粒を一日二回服用する事とする。甘草乾姜湯を兼用する。
2週間後、受診
センナ、大黄でなくても便が何とか出ている。体重が減ってきて、体が軽く、気分が良い。頭がすっきりして、耳鳴が無い。腰や膝も楽である。
風邪けは相変わらずである。
同じ処方を続ける。
4ヵ月後、受診
5キロ痩せた。顔がすっきりしてきた。
同じ処方を続ける。
7ヵ月後、受診
体重が52キロになった。
同処方を続ける。
12ヵ月後、受診
体重が49キロ、検診にて心肥大がなくなったと言われたとの事。
 炙甘草湯は別名を復脈湯とも言い、病後、病み衰えて、心動悸、結滞脈を訴える、一般的には重症感のあるひとに用いられる感がありますが、この患者さんのように本来、丈夫な人が頑張り過ぎて虚労に陥ったときに使用してよいことが多い。炙甘草湯の構成生薬には麦門冬が配されています。麦門冬湯証のように喉が渇いてイガイガし,のぼせ,首がこり,上胸部に燥熱があり,かつ気血両虚に陥っている人に対して,滋陰しながら気を下げ治癒に導く処方です。不整脈・発作性頻拍・心室性期外収縮・心臓神経症など,循環器疾患や甲状腺疾患,かぜが治りきらず喉がイガイガして咳込む気管支炎,気管支喘息などに適応があります。また,イライラ・不眠・腰痛・膝関節症・高血圧・秋に起きる夏ばてなど,幅広い疾患に使用できます。
 

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