血の道に女神散と当帰四逆加呉茱萸生姜湯
女性(26歳)
一昨年、付き合っていた男性と金銭のことでトラブルとなり別れたところ、物をあたりかまわず投げたり、過換気症候群が起こり、精神科で鬱病との診断を受け10種類ほどの薬を投与されているがはかばかしくない。
1ヶ月ほど前より、薬の副作用かロレツがまわりにくくなったという。
現症:
中肉、中背で、顔が赤黒く、両眼球結膜は充血し、眼の焦点が定まっていない。ボーとしていて、ハッキリ受け答えができない。
暑がりで水分を良く摂る。
食欲はあるが、肩こり、頭痛持ちで眠りが浅い。
便通は1日1回あるが、生理は不規則で量が多い。
くしゃみ鼻水が出やすいが、腹診上、胸脇苦満や腹直筋の攣急は認められない。
心下、下腹がやや冷え、下腹に於血を思わせる抵抗がある。
漢方医学的診断及び投与薬方
西洋医学的診断は鬱病であるが、漢方医学の立場では「血の道」である。
女神散証と判断したが、沢山の西洋医学の薬を服用している為か冷えが顕著に認められた。
そこで、女神散エキス顆粒と「冷えのぼせ」に対する治療薬方である当帰四逆加呉茱萸生姜湯エキス顆粒を一緒に1日3回投与した。これは冷えをとる薬を追加することで女神散の「のぼせ」を治す効果を倍増させようと意図したものである。
治療経過
1週間後
別人のように明るい顔つきになり、ハキハキしゃべることが出来るようになった。
西洋医学の薬は中止しているとのこと。テレビに集中できるようになったとも。
同処方を続行。
3週間後
顔が小さくなり、赤黒さが取れ身体がしまってきた。
笑顔もあふれるようになり、レース編みをしているとのことだった。
同処方を続行。
6週間後
生理がきて一層すっきりした。
風邪をひいたのか食欲がなく、身体がだるいとのことで女神散エキス顆粒を1日2回投与し、十全大補湯エキス顆粒を1日1回投与した。
4ヵ月後、職を探しているとのこと。すっかり元気になったようだ。
血の道には漢方薬を
現代医学にはない漢方医学の長所は、女性特有の自律神経失調症(血の道)に対する治療薬を持つことです。
女神散などのいわゆる「血の道」の薬は単に血の道症状に効果があるばかりでなく、同時に月経障害などの女性のトラブル、アトピー性皮膚炎や喘息、高血圧などの諸疾患にも効果があり、女性にとっての聖薬と言えるのかも知れない。