漢方症例集

血の道に通導散

血の道に通導散
女性(42歳)
21歳のとき,失恋で自殺を試みたが失敗。以来,歳月がたっても精神状態はそのときから時計の針が止まったままで,気力がない。仕事に就かず家でブラブラしていて精神科で治療を受けていた。春になると病状が悪化,暴れて精神科入院を繰り返す。自殺しようと飛び降りて下肢を骨折したことがあり,子宮筋腫の手術を受けた既往がある。便秘がちで月経は順調に来潮するが,月経前に著しくイライラし,不眠・精神不安がある。168 cm,68 kgと太り,タバコの臭いがきつく,下腹に瘀血を思わせる抵抗と圧痛があり,胸脇苦満は認めない。この精神不安は瘀血による気の上衝と判断した。過去に自殺しようとして飛び降りて下肢を骨折していることから,打撲や骨折時に使用する通導散証と思われ,通導散7.5 g/日分3を投与しました。
1カ月後、便がゆるめであるが,月経前のイライラが少なくなり,同じ処方を続けた。
3カ月後,春が近いせいか,躁状態となっていたので,通導散を倍量服用するように指示した。
6カ月後,今春は精神科に入院しなくても済んだとのことで,引き続き通導散を投与した。
【解説】 この女性のように精神疾患に罹っている人でも,月経前の著しい精神不安は,瘀血と判断し,通導散などのいわゆる血の道症の薬を投与することで陽性の精神症状が落ち着いていく人がいます。女性には駆瘀血剤を忘れてはいけないと感じる一例です。
 
 
 
 
 
 

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