漢方症例集

大黄剤の誤用

大黄剤の誤用
女性(26歳)
53才 女性。 10年来、便秘にて桃核承気湯を服用していた。主治医が廃業されてからは薬局で買い求め、便秘で苦しいときに時々、服用していた。2年程前より鼻が冷たいのに気づいていた。3週間前より、身体がえらく、声が出しにくい、かすれる。食欲が全くない。が、桃核承気湯を便が出ないために服用している。顔色が悪く青ぶくれし、手足がむくみ冷えている。下腹は冷え右下腹にガス満あり。裏寒.真武湯証と思われた。桃核承気湯が行き過ぎ裏寒をきたしたものと判断された。漢薬使用過誤である。真武湯7.5g/日(分3)を投与するとともに茯苓四逆湯を併用。
2週間後、顔色が良くなった。気分も良いが、 便はでにくい。頭痛もあるとのことで当帰芍薬散と真武湯各5g/日(分2)を投与。その後も便がすっきり出ないとの訴えが続き、あれこれ処方を工夫するが今一で、禁止した桃核承気湯を時折、服用していた。
やっと、1年後になって、水毒、気欝、瘀血に対する複合剤に近い九味梹榔湯6g/日(分3)を主として投与する頃より。長年の便秘も桃核承気湯を服用しなくても済み、体調もすこぶる良くなった。
                     
解説
便秘に桃核承気湯が良く投与されていますが、知らぬ間に裏寒に陥らせてしまっていることがよくあります
生活改善を指示すると共に、主として真武湯から治療を始め、その後、漢方薬を工夫しながら粘り強く、投与することで長年の便秘が治る人があります。大黄剤は効く薬だけに、連用に因り、知らぬうちに身体を痛めてしまうことがあることを知った上で、慎重に投与していただきたいと願います。
 
 
 

ページトップへ