漢方症例集

イライラ、ふらつき、胸焼け、便秘と下痢の繰り返し、下半身の冷えに小建中湯

イライラ、ふらつき、胸焼け、便秘と下痢の繰り返し、下半身の冷えに小建中湯
男性(75歳)
長年,胃食道逆流症で胃腸科にかかっているが,プロトンポンプ阻害剤を服用しても変わらないとのことで,当院を受診。170 cm,48 kgと痩せており,長年,一人暮らしでさまざまな苦労をされている様子だった。顔はほんのり桜色にのぼせているが下半身が冷たく,冷房に極端に弱い。足がもつれやすく,ガクガクしやすい。イライラ・クヨクヨしやすく,頭がふらつき,寝つきが悪く,耳鳴りがする。食欲はあるが胃が重く,もたれや胸やけがあり,便秘と下痢が交互に起きるなど,胃腸の調子は絶えず悪く,動悸・胸の苦しさもあるとのこと。胸脇苦満はなく,心下痞し,内臓下垂があるようで,臍下が冷えていた。脈は虚脈で動悸や胸の圧迫感もあるとのことで,漢方医学的には虚労で,小建中湯証と思われた。しかし,腹直筋の緊張や手掌の発汗がわからなく,便秘もひどくないため,小建中湯は少量にとどめる方がよいように思われ,小建中湯5g /日(分2)を投与。
2週間後,受診。顔色がよくなり,動悸や胸の圧迫感が少し落ち着いたとのことで同じ処方を続けた。
4週間後,受診。胸やけも少しよくなった,身体の冷えも少し楽とのこと。同じ処方を続けた。
4カ月後,受診。気分も落ち着き,太ってきて,笑顔がみられるようになった。
【解説】高齢者には補気剤や気血両補剤を用いるのが一般的ですが,興奮しやすく,疲れやすく,虚労に陥っている人には小建中湯など建中湯類が必要なこともあります。少量の小建中湯で長年の愁訴がよくなる方もいます。患者さんの状況を診てケースバイケースで必要量を加減しています。
 
 

ページトップへ