漢方症例集

ヒステリーに甘麦大棗湯

ヒステリーに甘麦大棗湯
女性(23歳)
8ヶ月前にショックなことがあって24時間ふわふわ眩暈、頻脈、歩けない。町で動けなくなって救急車で運ばれ入院。諸検査を行うが著変なし。六君子湯や苓桂朮甘湯などを投与されるがはかばかしくないと訴え、車椅子に乗せられて受診。家の中ではかろうじて歩けるとのこと。疲れやすくて、イライラ、クヨクヨしやすい。寝つきが悪く、夢をみる。頸肩の凝り、耳鳴り、目の疲れ、頭痛あり。下痢しやすく、尿が近い。月経痛はあるが月経は順調である。中肉中背でしっかりとした身体つきで、顔がのぼせている。胸脇苦満や瘀血所見などはないが、左腹直筋の緊張がある。つきものがついて、烈しい病状をおこしているように思われ、甘麦大棗湯7.5g/日分3を投与。
1週間後、受診。頻脈やふわふわ眩暈がおちつき、車椅子が不用になったと喜ばれる。臍下に冷えを感じ、隠れた裏寒があると推察され、甘麦大棗湯と真武湯各5g/日分2を投与。
3週間後、受診。晴れ晴れとした顔つきで、一人で、地下鉄に乗って受診されました。
 
ヒステリーに甘麦大棗湯
著しい心身不調があるのにも関わらず、たいした身体所見がなく、色々漢方薬を試しても効果がない時に、つきものがついたように思えるのを目標に、甘麦大棗湯を投与すると著明な効果があることをよく経験します。漢方を知っていて、いささかお役に立てたとの臨床医としての喜びを甘麦大棗湯によく味合わせてもらっています。また、甘麦大棗湯は強力な瀉剤と伊藤先生に教えて頂いています。隠れた裏寒を見逃さず、真武湯を併用するなどして陰を補うことで、甘麦大棗湯の効果を確実にするように配慮して治療に当たっていることが好結果を得るためのコツと思います。
 

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