漢方症例集

自律神経失調症に真武湯

自律神経失調症に真武湯
女性(34歳)
某年78日受診
10年前分娩後、習慣の違いで実家と婚家との間の板挟みになり苦しんだ。
体重が7~8kg痩せ、だるい、疲れ易い、ふらつく、眼たい、横になりたい、目が疲れる、風邪を引きやすい、朝起きにくい、手足が冷える、胃がもたれやすい、肩・首の辺りが凝る、等の症状が出現。一時、シーハン症候群と言われたことがある。現在も体重の減少こそは少ないものの、同症状が続き、当帰芍薬散を服用するが改善しなかった。
痩せて、背が高く、顔色が土色で浮腫んでいる。クヨクヨしやすく、不安感が強い。寒がりで汗をかきにくい。排便は一日一回。緊張すると下痢しやすい。生理は順調であるが、10年前に出産して以来妊娠していない。臍下と背部に冷えを触知し、右下腹部にガス満を認める。
裏寒及び顔の浮腫み、眼い・だるい・ふらつくなどの水毒症状、右下腹部のガス満より、真武湯証と判断した。真武湯エキス顆粒5gを一日分として投与。
2週間後、受診
食べてもムカムカせず、腹に自信がついてきた。よく汗が出るようになり気分が良い。
肩や首の凝りが良くなったとのこと。同処方を続ける。
一ヵ月後、受診
顔つきが生き生きしてきた。朝起きた時の気分が良い。ふらつきやだるさが少なくなってきたが、外出するとすぐ胃が疲れる。
引き続き同処方を続けると共に、風邪気味になったら甘草乾姜湯を服用するように指示。
2ヵ月後、受診
顔がふっくらと肉が付いてきた。身体も少しばかり丸くなり元気になった。胃の調子も良い。同処方を続ける。
 
身体を温めると治ることも
いわゆる自律神経失調症を患っている人の中には、漢方医学の立場から診ると裏寒(代謝低下、サブショック状態に近い状況)に陥って臓器機能が衰えた結果、だるさやふらつきなどの症状が起きていることがある。
この症例のように真武湯などの温裏剤を投与すると短期間ですっかり元気になることがある。
医師として、つくづく漢方医学を知って良かったと思えることの一つは現代医学にない裏寒の概念と温裏剤である。
 
 

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